不確定申告

tanaka0903

読書

日本に学者はいなかった

丸谷才一「文学のレッスン」のp152に「日本に学者はいなかった」という章がある。 非常に困惑する章題なのだが、本文を読んでみると、 「近代日本文学では学問が軽蔑されていた」、とか、 「小林秀雄は明治憲法で中村光夫は現行憲法だ」などと書いている。 …

平家物語の主人公

丸谷才一は「文学のレッスン」の中で p124 「平家物語」は、前半の主人公は平清盛、後半の女主人公はその娘である建礼門院徳子という形になっていて、このバトン渡しがうまくいっているせいで成功している。 と書いている。 はて。そんなばかな。 「平家物語…

登城

丸谷才一の「文学のレッスン」に江戸時代の侍はひと月に四、五回お城に行けば勤めたことになるから暇人天国だったなどと書いている(p204)が、そんなはずはないと思う。 事務職じゃないんだから城にいれば仕事が勤まるはずもない。 ある程度以上偉い人は蔵米…

文学のレッスン2

長くなるので記事をわける。 p151 色好みの話で、こういうエピソードがあります。本居宣長が亡くなったとき、弟子たちが本居家に集まって、酒を飲みながら口々に先生の偉大さをたたえ、あんな偉い学者はもう出ないみたいなことを語りあっていた。そしたらお…

文学のレッスン

丸谷才一「文学のレッスン」を読んだ。 丸谷才一はもうなくなってしまったが、ものすごい長寿で、死ぬまで執筆活動をしていた幸運な人だ。 この本もインタビューという形で2007年頃から始めて2010年に出たものだが、 80才をとっくに越えていた。 「文学概論…

伊東静雄

「わがひとに與ふる哀歌」 「夏花」 「春のいそぎ」 「反響」以後 全詩集補遺

「山月記」授業ノート

中島敦「山月記」授業ノート 藪野直史

会話記号

『山月記』の会話記号。 確かに中島敦は句読点やカギ括弧の使い方にかなりのゆらぎがある人で、 私としてはそれに好感を持っている。 言語として意味が通るかぎり作家は出版社や新聞社の慣習や、文部省の指導要領などから自由に、 文章を書くべきである。 作…

自殺

すでに誰か指摘していることだと思うが、 夏目漱石の「こころ」では「K」がまず自殺し、次に乃木希典が妻を巻き添えにして殉死という形で自殺し、 最後には「先生」も自殺してしまう。 この小説のテーマが自殺であることは紛れもない事実だ。 なぜ高校の教科…

これでも国家と呼べるのか

小室直樹は預言者である。 彼の預言で最も有名なのは「ソビエト帝国の崩壊」だが、 他にもいろんな重大な預言を遺している。 「これでも国家と呼べるのか」は平成八年、つまり、 今から18年前、 1996年に出た本だが、恐るべき預言をしている。 日本人はまだ…

古典

以前にも書いたことがあるのだが、 ある人のブログを読んでいてふと書きたくなったのだが、 私が高校生まで影響を受けたのは、 祖父、内村鑑三、小室直樹、中島敦。大学生になってからは明治天皇御製。 これらの人々にはあまり関連性はないように思える。 し…

国枝史郎

いろんな意味でいろいろひどい。 天草四郎の妖術。 天草四郎の臨終の言葉がイエスと同じく 「われ渇く」「事畢りぬ」 だったというのだが、作り話にもほどがある。 ヒトラーの健全性 たわいないとしか言いようがない。 戦中の日本人がみなこんな馬鹿だったと…

読解

なんかうだうだ書きなぐるのもどうかと思うのだが、ここは書き捨て場なので、 読みたくない人は読まないし、 読みたくなくて読んだとしても他人のブログに文句を言うひとはいないだろうと思うから、 これからもあまり遠慮せず書こうと思うが、 そうでない場…

南総里見八犬伝

南総里見八犬伝が、足利持氏・成氏父子によって引き起こされた、 永享の乱から享徳の乱に至る、関東の騒乱を元にした伝奇小説であることを知り、 今さらながら衝撃を受けている。 古河公方のことを滸河公方(訓みは同じ)などと記している。 南総里見八犬伝…

判断力批判

カントの「判断力批判」によれば、言語芸術は雄弁術と詩(文芸)に分かれ、 雄弁術とは悟性の仕事を構想力の自由な戯れであるかのように進める芸術、 詩とは構想力の自由な戯れを悟性の仕事であるかのように進める芸術、なのだそうだ。 わかるようなわからん…

尚未

孫文の遺言だが、中文版ウィキペディアには、 現在革命尚未成功。凡我同志,务须依照余所著《建国方略》、《建国大纲》、《三民主义》及《第一次全国代表大会宣言》,继续努力,以求贯徹革命尚未成功、同志仍須努力 とあって日本語版には なお現在、革命は、…

フリーランスと業界

フリーランスとか自由業というのも完全に一人で仕事をしているわけではない。 フリーランスの多くは、専門学校を出て、いったんどこかに就職して、 固定給から年俸制になり、 よその会社の仕事もかけもちするために退社して独立するわけだ。 つまり会社に属…

助動詞「り」の謎

助動詞「り」は「あり」と同根であって「てあり」「たり」ともほぼ同義。 四段・サ変・カ変・上一段にしか接続しない。 「給へり」「せり」「来れり」「なれり」「着れり」など。 下二段だと「たり」しかつかない。 「経たり」「得たり」など。 ラ変は同語反…

秋成

秋成の擬古文は、宣長のような堅苦しさもなく、なめらかですばらしい。 みかどに立てば、世をまつりごち、庵のどかに住みなしては、あまねく病に験ある薬を舐めわきて、 惻隠とかの心をいたせしとや。 「まつりごち」は「まつりごと」を活用させた語だが、源…

歴史と文学

小林秀雄の「歴史と文学」というエッセイ読んでる。少し面白い。 例えば明治維新の歴史は、普通の人間なら涙なくして読むことは決して出来ないていのものだ。 これを無味乾燥なものと教えて来たからには、そこによっぽどの余計な工夫が凝らされて来たと見る…

なんて素敵にジャパネスク

氷室冴子はマンガやアニメの原作者としてはすでに知っててまあ好きなほうだから、 小説も割といけるかと思ってためしに『なんて素敵にジャパネスク』を読み始めたのだが、 いろんな意味で驚いている。 まず、こんな昔からラノベって1センテンスごとに改行し…

人虎伝

「山月記」はなぜ国民教材となったのかというのを書いたせいで気になって調べてみた。 山月記の中で、中島敦は虎に 人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短い などと言わせているのだが、 私はこの台詞がすごく好きなんだが、 これ…

auブックパス雑誌読み放題

正直な話最近はキンドルよりもずっとスマホでauブックパスを読んでることが多い。 手塚治虫はだいたい読み飽きて、 だめんずうぉーかーとかも読み飽きて、 今は雑誌読んでるが、有料なのはよけて、 読み放題だけ読んでるのだが、それでも読み切れないくらい…

池田雅延氏 小林秀雄を語る

小林秀雄の『本居宣長』について今までいろいろ書き散らしてきたのだが(小林秀雄でこのブログを検索してもらったほうが話は早い)、 担当編集者池田雅延氏の詳しい講演があり、 『本居宣長』がどのように執筆されて成立したかがわかる。 130分もあるので、…

聖女懐妊

auブックパスで手塚治虫のマンガを手当たり次第に読んでいるのだが、 概しておもしろくない。 ファンタジーにしてもミステリーにしても設定に無理がある。 ミステリーは強引だし、ファンタジーは理由なく奇跡が起こる。 特に迷信深いのが困る。初期の『メト…

くんなまし

花魁が「くんなまし」というのは「くれ」「なまし」で「なまし」は万葉時代から使われた連語で「まし」は推量で、もとはと言えば反実仮想。 「くれないかなあ」とか「くれたらいいのに」という意味だと思うが、 なぜ花魁がこんな言葉を使うようになったのか…

「山月記」はなぜ国民教材となったのか

私は中島敦が好きなのでこの本を読ませてもらったのだが、 まず、 高校国語教師というのは、 おおよそただの人である。 指導要領もなしに授業などできない。 では指導要領を作るひとたちはどうかと言えば、 別に彼らが特に中島敦を理解できるわけではないだ…

将軍家の結婚

将軍家の結婚という本があって、私が書いた将軍家の仲人とかなり近い。 比べて読めば私がどこを創作したかわかっておもしろいだろうと思う。

はつきりした形をとる為めに

はつきりした形をとる為めに。 これもまた短くてわかりやすい文章である。 私の頭の中に何か混沌たるものがあつて、それがはつきりした形をとりたがるのです。さうしてそれは又、はつきりした形をとる事それ自身の中に目的を持つてゐるのです。だからその何…

小説の読者

小説の読者。 これは他の芥川の文章よりもずっとわかりやすいと思う。 今の小説の読者は、 まず小説の筋を読んでゐる 次に、描かかれた生活に憧憬を持つてゐる 次に、読者自身の生活に近いものばかり求めてゐる ストーリーがおもしろいから読む。 ミステリー…