不確定申告

tanaka0903

2015-01-01から1年間の記事一覧

世襲の効用

社会システムというものが何もなかった中世においては、 政治にしても社会保障にしても芸事にしても、 何か世襲という形にしなくては持続性を持たなかった。 世襲でない、皆に機会が与えられて競争ができる状態のほうが優れているというのは、 社会システム…

三種の神器の呪術性

『虚構の歌人』では承久の乱のことを日本最大の黒歴史と書いた。 後堀河天皇が三種の神器の権威だけで即位したのは律令制が否定されて古代の呪術が復活したからだと。 歴史を巻き戻したからだと。 ましかし、改めて思うに、三種の神器はそれまでも政争の具に…

雲居に紛ふ沖つ白波

藤原忠通 わたの原 漕ぎ出てみれば 久方の 雲居に紛ふ 沖つ白波 「くもゐにまがふ」だが、これ自体は珍しいのだが、 検索してみると「かすみにまがふ」という用例がある。 「花のためしにまがふ白雪」などというものもある。 「しらがにまがふ梅の花」という…

新続古今集

21代勅撰集の最後、『新続古今集』の仮名序に しかるに前中納言定家卿はじめてたらちねのあとをつぎて、新勅撰集をしるしたてまつり、前大納言為家卿また三代につたへて続後撰をえらびつこうまつりしよりこのかた、あしがきのまぢかき世にいたるまで、ふぢ河…

『虚構の歌人』を改めて読み直してみたが、これはもうね、書いては削り、書いては削りで、 最初は百人一首の謎みたいな話だったのが藤原定家伝みたいなものになり、 それから定家と禅みたいな話になりそうになり、 さらに承久の乱とか北条泰時の話が書きたく…

『古今和歌集の真相』を出したのは今から2年も前のことになってしまった。 それで読み返してみるともうほとんど何もかも忘れてすごく新鮮に読める。 この頃からすでに藤原定家とか古今伝授とか後鳥羽院の話を書いている。 『虚構の歌人』には自分の歌もけっ…

また道玄坂に行ってきたのだが、 今の世の中、本を読む人はどんどん減っていて、逆に本を書く人、小説家になりたい人がどんどん増えている。 そして今や本を読む人と本を書く人がほとんど同じくらいになってしまっている、らしい。 本を読む人は自分も書いて…

実はこないだ久しぶりに中編くらいの小説を書いて新人賞に応募したのだが、これは落ちてもKDPで出す予定がない。 新人賞が取れれば多少恥をかいてもよいが、そうでないのなら人目にさらしたくはない、そういうものだからだ。 私の場合あまりネタを使い回すこ…

私はKDP作家や同人作家や個人出版作家を自称したことはないはずだ。 それはあきらかに事実と異なる。 私が小説を書き始めたのは『剣豪将軍義輝』を読んで、自分も南北朝や室町時代の小説を書いてみたくなったからだ。 『剣豪将軍義輝』というよりも腰越公方…

或老人之歎歌一首並反歌四首

我が書きし ふみのかずかず 我が詠みし 歌のかずかず うつせみの うつし人にて あらむ間に 残しおかむと たくめども ときのまにまに いそとせは むなしくすぎて 身とともに 心も老いて あたらしき 思ひも出で来ず めづらしき ものも見出でず 名をのこす 人は…

「ハイディ」邦訳疑惑

矢川澄子訳『ハイジ』は のどかに広がる昔ながらの小さな町、マイエンフェルトから、一筋の小道が、木立の多い緑の牧場をぬけて、大きくいかめしくこの谷を見おろす山々のふもとまでつづいています。 で始まる。 野上弥生子訳だと スウィスのマイエンフェル…

ヨハンナの長兄はテオドールTheodor。 1846年に医師免許を取り、 1847年に軍医として分離同盟戦争(スイスの内戦)に従軍。 次兄はクリスチャンChristian。 1847年頃にベルリンに留学。ブラジルに渡り、農場を作る。 もう一人男子がいたが早世した。 姉妹は、…

『正法眼蔵随聞記』2-1

是によりて一門の同学五根房故葉上僧正の弟子が、唐土の禅院にて持斎を固く守りて、戒経を終日誦せしをば、教へて捨てしめたりしなり。 葉上とはまさしく栄西のことである。 道元が栄西のことを「一門の同学」と呼んでいるのは興味深い。 このくだりは、仏像…

wenn, sollte dann

いつもの長文(というより、長いセンテンス)の時間です。 Wenn wir Menschenkinder kaum ertragen können, die Fehler und Flecken zu sehen, die uns und unsere Mitmenschen entstellen und erniedrigen und um so schärfer sehen, je mehr uns an den Me…

dagegen

Fanden nun Vater und Mutter ihren besten Trost und die befriedigende Nahrung für ihr inneres Leben in den Worten des alten Bibelbuches und solcher Schriften, die desselben Sinnes waren, so war es dagegen den Bedürfnissen ihrer Natur gemäß,…

Ich möchte nicht das Kind sein!

Ich möchte nicht das Kind sein! 直訳すれば、「私はあの子供でありたくない」だろうか。 敢えて英訳すれば I might not be that child! とでもなろうか。 で、英語版では I am glad I am not the child! 「私があの子供でなくて良かった」。 矢川澄子訳は …

デーテの言い訳

Sie besann sich also nicht lange, sondern sagte mit großer Beredsamkeit, heute wäre es ihr leider völlig unmöglich, die Reise anzutreten, und morgen könnte sie noch weniger daran denken, und die Tage darauf wäre es am allerunmöglichsten, u…

Heidis Lehr- und Wanderjahre

Herr Sesemann verstand die Sprache und entließ die Base ohne weiteres. 直訳すれば、 ゼーゼマン氏はその言葉を理解し、その叔母をあっさりと解放した。 矢川澄子訳だと ゼーゼマン氏は、デーテの本心をさっして、そのままひきとらせてやりました。 とな…

Der Dialog zwischen der deutschen Jugendbuchautorin und dem Schweizer Spyri-Forscher zeigt, wie schwer der Abschied von einem liebgewordenden Bild fällt.

惟明親王

式子内親王は人と滅多に歌を詠み交わしていないのだが、 その数少ない例が、九条良経と惟明親王である。 良経については『虚構の歌人』に書いた通り。 惟明親王のことも書いてたのだが、削ってしまった。 それをここに書いておく。 惟明親王 思ひやれ なにを…

亀山天皇と臨済宗

臨済宗はもともと鎌倉だけのもの、武士だけのものだった。 ところが亀山天皇が臨済宗南禅寺を建ててここで出家したものだから、 京都でも、公家の間でも、臨済宗が流行ることになった。 亀山天皇はなぜ臨済宗を信仰したのか。 私は、藤原為家(定家の息子)…

俊成

藤原俊成は葉室家の養子だったとき、葉室顕広と名乗った。 葉室家の養父は葉室顕頼と言ったから、養父から「顕」の字をもらったわけである。 葉室顕頼の没年は1148年。 俊成が美福門院加賀と結婚したのは、長男・成家の生まれた年(1155年)から推測するに、 …

秀能

後鳥羽院口伝に 又、寂蓮・定家・家隆・雅經・秀能等なり。寂蓮はなほざりならず歌よみしものなり。あまり案じくだきし程に、たけなどぞかへりていたくたかくはなかりしかども、いざたけ有歌よまむとて、たつたのおくにかゝる白雲、と三體の歌によみたりし、…

定家の禅3

そう、もともとは、定家の禅というタイトルにしようとしていたのだった。 定家の禅2、 定家の禅。 最初は「古今和歌集の真相」の続編で「小倉百人一首の真相」みたいのを書く予定だった。 しかし小倉百人一首は100首全部並べるのがじゃまくさいので定家に絞…

藤原定家

藤原定家の本がまもなく出るので、 自分のブログを読み返しているところだが、すでに2010年に 駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕ぐれ について藤原定家 定家にしてはめずらしく写生的な歌なのだが、 実際には存在しない情景を詠んでいる。…

太田道灌の出家

太田資長こと道灌の父資清の法名は道真であって、法名が似ているところから、父と同様な経緯で出家したものと思われる。 主君の扇谷持朝の法名が道朝であるところから、おそらく持朝の死(1467)とともに出家して道灌と名乗ったのだろう。 ググると道灌は、川…

とても難しい

Später, als sich eines hierin, das andere dorthin in den Wald hinein verlor, sah Nelly, wie Sarah, an einen Baumstamm gelehnt, vor sich hin schaute, tief in ihre Gedanken verloren. eines(あるもの) と das andere(ほかのもの)、hierin(こ…

明治神宮の森

明治神宮の森が今年で100年目だというのをNHKでやっていた。 明治神宮はもともとは荒れ地だった。 荒れ地と言えるかどうかはともかく、代々木練兵場という更地だったわけだ(江戸時代は井伊家の下屋敷等)。 100年前に3人の天才がいて、 最初針葉樹と常緑広…

今は藤原定家とヨハンナ・シュピリを同時並行でやっているのだが、 定家のほうは最終校正を終えたので、もうやることはほとんど残ってない。 いろんな意味で疲れたが、KDPと違ってこっちは共同作業的な部分が多いので、あまりいろいろ書くわけにはいかない。…