不確定申告

tanaka0903

文学のレッスン2

長くなるので記事をわける。

p151

色好みの話で、こういうエピソードがあります。本居宣長が亡くなったとき、弟子たちが本居家に集まって、酒を飲みながら口々に先生の偉大さをたたえ、あんな偉い学者はもう出ないみたいなことを語りあっていた。そしたらお酒を運んでいた本居家の女中の一人がワーッと泣きだした。みんながどうしたんだと問いただしたら、その女中いわく、「そんなに偉い先生だとはわたしは知りませんでした。毎晩のようにわたしの部屋に来て、一緒に寝ようというのを、わたしは邪険に断ってばかりいました」って。

― それはどこかに書いてあるんですか(笑)。

岡野弘彦さんから聞いたんです(笑)。

岡野弘彦三重県の神主の家に生まれたので、もしかすると実話かもしれない(笑)。 丸谷才一より一才年上で存命。 でもなんとなく、 国学者神道家のコミュニティーの中で自然と広まったゴシップのような気がするなあ。 本人ご存命なのだから聞いてみたい気はする。

私は、宣長の恋歌をみていて、ただ観念的に恋を歌ったのではなかろうとは思っていた。 ある程度事実に基づく心情が盛り込まれているのではないかと。 ただ、七十近くのおじいさんが毎晩女中をくどくということと、 青年時代に色好みであったということは必ずしも結びつかないと思う。

いずれにしてもどうでもよい話ではある。 単なるエピソードとして紹介してみたかったのだろう。