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寝るのにも 起きてレポート 書くのにも どうしようもなく 蒸し暑い夜
対数が 逆さまだった 最初から 書き直しだよ 頭に来るな
ひさしぶりに こたつを出して あたりつつ 松本伊代の 歌など聴けり
金のない 学生なれば やきそばの 三食分を 晩飯にする
ここちよき ものにこそあれ ひろびろと ひとりこたつに うたたねするは
ここちよき きはみにぞある 血を吐きて 床に伏したる 祖父を思はで
電話引き 初めて受けし 連絡は 故郷の祖父の 血を吐きぬとぞ
わが家は いかにあるらむ ことしげき をりは人手も 足らざるらむを
朝の日に 窓は白みて あまだれの 音にまじりて 鳥のねもする
ひねもすに 雪はふれども 冬のごと いとど寒くは あらぬよはかな
春来むと けはひはすれど たれこめて けふまたのべに 雪ぞふりつむ
雪降れば 壁にむかひて 日のささぬ 窓もひときは 白き朝かな
大君の あとをしたひて つとめてに 代々木の杜に まゐる人々
つとめての 雪白きのべに つどひきて ひごとにすらし ラジオ体操
さくらばな 咲きそむらむと 岡の上に ひごと登れど 今日もふふめり
寝てもよし 日に当たりてもよし スロープの 芝生の若芽 おひいでにけり
大根を まるごともとから しっぽまで おでんの素で 煮てくひにけり
大根を 輪に切るひまの 広ければ なかなか芯まで 煮えきらざるなり
安ければ 一度におほく 買ひけるが 鰯ばかりを ただ食はなくに
春休み まだあけざれば 図書館に ふみよむ人も 少なかりけり
安しとは 書かれたれども 我が目には いとど安くは 見えぬ品かな
春休み バイトなき日は つれづれに 長きいとまを もてあましけり
春されど いまだこたつを しまはねば 夜の寝床は こたつなりけり
あれこれと 買はまほしきは ありけれど 先立つものは 今あらなくに
ラジオにて 冨田靖子が 物語り するコーナーは おはりけるにや
朝イチに あきつるコマも 三年の 講義をとりて 埋めてしまはむ
いとまなく 散る花みれば ことのはの しげき夏こそ やすらはれけれ
藤棚も 銀杏並木も もとろもに 緑いだして ながめ変へけり
あしびきの 山手線に ひさしくも 乗らずすごせり 引っ越しければ
奥山に 踏み入りしかば いとまなき こととはなれり ちぢにまよひて
新しき 品々買ひて 部屋の中に いかに置かむと 思ふころかな