不確定申告

tanaka0903

油谷倭文子の歌

雪深き谷の古巣のうぐひすはまだ春としも知らずやあるらむ

春風は吹きそめにけりつくばねのしづくの田居や氷とくらむ

花の色に心も染めぬうなゐ子の昔よりこの春は待たれし

雪深きかきほの梅もうぐひすの声聞くときぞにほひまされる

いつしかも行きて見てしがみよし野のよしのの山の花の盛りを

昔より神も諫めぬわざならし花に浮かるる春の心は

玉と思ふ露はくだけしはちすばにまたこそけさはあざむかれけれ

月見ればおふけなくしもなりぬかな知らぬ千里も思ひやられて

山里のもみぢの色を見ぬ人は秋に心を染めずやあるらむ

よひよひに涙はゆるすをりもあるをやるかたなきぞ心なりける

来じと言はば来む夜もありと待たましを来むと頼めて来しやいつなる

思ふなる心に数はなきものをなほこそ待ためみとせ過ぐとも

一夜経(ふ)と言へばたやすしきのふけふおぼつかなさの数ぞやは知る

末いかにちりやかさねむ手枕のにひしきほどにふた夜来ぬ君