霊元院の歌
梓弓やしまの外の波風ものどかなる世の春やいたらむ
袖の香を家づとにせむ道の辺の垣根の梅は折るべくもなし
山水の一つ流れをいく町にすゑせき分くるしづが苗代
夏もはやなかばは過ぎぬさみだれの晴れぬ日かずを数へこし間に
おのがためつれなき妻を有明の月にたぐへて鹿や鳴くらむ
消えなばと拾はで見るも笹の葉のうへにたまらぬ玉あられかな
都にはまだ降りそめぬ雪をけさ山の端白く見てぞおどろく
風に伏し霜にしほれて池水のみぎはに枯れぬ芦の葉もなし
つたひ来る流れも細き岩間よりこほりにけらし山河の水
にひまくらかはす言葉も年月の思ひのほどをいかが尽くさむ
おどろかす一筆もがなあひ見しは夢かとたどる今朝のまた寝に
ひとたびはあひ見し人の忘るばかりにまたぞつれなき
ひととせのしわざいとなき民や住む田づらに見えてつづくいほりは