詞花集
萌えいづる 草葉のみかは 小笠原 駒のけしきも 春めきにけり
小笠原は小笠原氏発祥の地であり、甲斐国巨摩郡にある地名。 巨摩郡と書くが駒郡という意味であろう。 広大な馬牧場があったか。
富士や白根山などの連峰の谷間の牧草地に春が来ると、 新緑だけでなく、馬のようすも春めいてくる。 そんな春の牧場を詠んだ歌。
なんとすばらしい歌だろうか。 もう少しこの歌は評価されて良いと思う。 新風とはまさにこのような歌を言うべき。 定家はこういう歌にはまったく冷淡だった。
春くれば花のこずゑに誘はれていたらぬ里のなかりつるかな
白河院御製。なかなかよい。
さくらばな手ごとに折りて帰るをば春の行くとや人は見るらむ
素性法師の、見てのみや人にかたらむさくら花てごとにをりていへづとにせむ、にちなむのであろう。なかなか良い。
春ごとにみる花なれど今年より咲きはじめたるここちこそすれ
これも素直な良いうた。
ふるさとの花のにほひやまさるらむしづ心なく帰る雁かな
なかなか良い。
年をへて燃ゆてふ富士の山よりもあはぬ思ひは我ぞまされる
詠み人しらず。 民間歌謡か。
全体的にレベル高い。