風雅集
岩佐美代子『風雅和歌集全注釈』を読み始めた。上中下三巻たっぷりある。 も少しコンパクトでもよかったのだが、まあいいや。
為兼
降る雪も山もや変はる変わらじを心よりこそ春は立ちけれ
今日に明けて昨日に似ぬはみな人の心に春の立ちにけらしも
しづみはつる入り日のきはにあらはれぬかすめる山のなほ奥の峰
鶯の声ものどかに鳴きなしてかすむ日影は暮れむともせず
すごい歌だな。やはり為兼は別格だ。
貫之
春立ちて咲かばと思ひし梅の花めづらしみにや人の折るらむ
わろす。さすが貫之。彼はこういう歌が多いんだなあ。
定家
なにとなく心ぞとまる山の端に今年みそむる三日月の影
定家は影が好きなんだな。
朝日さすみもすそ川の春の空のどかなるべき世の景色かな
松浦潟もろこしかけて見渡せばさかひは八重の霞なりけり
なんかゴージャスで大いばりな歌だなあ。派手好みな若き帝王って感じだよなあ。
春来れば雪げの沢に袖垂れてまだうらわかき若菜をぞ摘む
「うらわかきわかな」とは大胆な反復だなあ。
読み人しらず
人ごとに折りかざしつつ遊べどもいやめづらしき梅の花かな
為氏
人もなき深山の奥のよぶこ鳥いく声鳴かば誰かこたへむ
つばくらめすだれのほかにあまた見えて春日のどけみ人かげもせず
おもしろいなこれ。わざと字余り。「あまた見えて」でなくて「あまた見え」でも良いはず。