鎧袖一触
至如平清盛輩、臣鎧袖一触、皆自倒耳。
を
平清盛輩の如きに至っては、臣の鎧袖一たび触るれば、皆自ら倒れんのみ。
と訓じている。 しかしまあ、 「臣の鎧の袖ひと触れにて」とも訓んでもよかろうし、 そもそも「触るれば」(已然形)であろうか。 古典文法に則れば「触れば」(未然形)ではないか。 あるいは「一触せば」ではないか。
教育勅語の「一旦緩急あれば」の例もある。
あれ、前も同じこと書いた気がする。 そうだ、有者だ。 万葉集にしろ漢文にしろ已然形と未然形の違いが曖昧で困る。
宣長の歌
書読めば昔の人はなかりけりみな今もある我が友にして
これは「書読まば」では少し変だ。 「もし本を読んだら」ではなくて「本を読むと」だからだ。 しかし話は戻るが、 「もし一旦緩急事があったら」とか「もし袖が触れたら」という意味に取るのが自然なわけで、 やはり未然形なんじゃなかろうか。