不確定申告

tanaka0903

古典

思うに、江戸時代の儒者文人にとって、 古文と漢文と日本史というものは、渾然一体としたものであり、 どこかに切れ目があったのではない。 今それらは三つの全く異なる「教科」になった。

日本史の知識がなくて古文が読めるわけもなく、 読んでおもしろいわけもない。 古文をおもしろいと思うのも、それを文芸作品とか歴史小説とかとして読むからである。 センター試験の問題はそういうコンテクストをまったく無視している。 高校生に嫌われるのは当然だ。

日本史の方もそうだ。 日本史なんてものは、古文という古典文芸作品の集成がなければ、 この地球上において単なる極東のローカルな歴史に過ぎない。 おもしろいはずがない。

戦前はまだ日本史と古文は密接に連携していたが、戦後は無残に切り刻まれた。 平家物語太平記は死んだ。 今更蘇生させるのはほとんど不可能だ。 特に問題なのは太平記を読まなくなって南北朝・室町・応仁の乱までの流れがまるで見えなくなってしまったことだ。ほとんどの日本人は室町音痴だ。 その最たる例は司馬遼太郎