夏の歌
拾遺集と後撰集を読み始める。 「よみ人も」とはなんじゃと思ったが、「題知らず」に続けて「よみ人も知らず」という意味なのだな。 古今集に比べて夏の歌が多い。
蝉の声聞けばかなしな夏衣薄くや人のならむと思へば
今日よりは夏の衣になりぬれど着る人さへは変はらざりけり
なるほどねぇ。
よそながら思ひしよりも夏の夜の見果てぬ夢ぞはかなかりける
夏の歌というよりは恋の歌って感じだわな。
八重むぐらしげき宿には夏虫の声よりほかに問ふ人もなし
常もなき夏の草葉に置く露を命とたのむ蝉のはかなさ
うちはへて音をなきくらす空蝉のむなしき恋も我はするかな
さみだれのつづける年のながめにはもの思ひあへる我ぞわびしき
うつせみの声聞くからにものぞ思ふ我もむなしき世にし住まへば
人知れずわがしめし野のとこなつは花咲きぬべき時ぞ来にける
常夏に思ひそめては人知れぬ心のほどは色に見えなむ
かへし
色と言へば濃きも薄きもたのまれずやまとなでしこ散る世なしやは
やまとなでしこは必ずいつかは散ってしまうのだから、薄い色も濃い色もあてにできない。 常夏はやまとなでしこのこと。
なでしこの花散りがたになりにけり我が待つ秋ぞ近くなるらし
次のは秋の歌だが、なかなか面白い
夏衣まだひとへなるうたた寝に心してふけ秋の初風