不確定申告

tanaka0903

夜間飛行

久しぶりに、堀口大学訳・サンテグジュペリ「夜間飛行」を読む。 この本に「職業倫理」、というふうにしか表現しようがないが、 ずいぶんそういうものの影響を受けたんだなあと思う。 ある種、骨肉となるまで自分の中の一部になってる。 今読み返すとそれはある程度までは、冒険者で作家だった彼の固有の思想というよりは、 フランス人、あるいは西洋人の職業(天職)に対する意識を反映しているのだろう。 上司は上司、部下は部下で、むやみと私生活レベルでべたべたすべきではない。 それは会社だけでなく軍隊でもそうだということだろう。 上司が部下を頼り、部下は上司を頼るというのは、東アジアでは当たり前のことで、美徳でもあるかもしれないが、 いざというときに上司が部下を愛するが故に処罰をためらったり、 部下が上司に手心を加えてもらうのを期待したり、 そのようなことがないように、 パブリックとプライベートのけじめをはっきりさせる、 それでいて上司と部下の間は暗黙の強い友情で結ばれている、というのが西洋における理想なのだろう。

サンテグジュペリはちょうど1900年に生まれ、 31才で「夜間飛行」を書き、 39才で「人間の土地」、 43才で「星の王子様」を書いて、44才で死んだ。 彼よりも長生きしようとしている自分に驚く。 「夜間飛行」に出てくるリヴィエールですら50才だ。 自分の仕事にいい加減飽きてきたのも当たり前だなと思う。