辞世千人一首
荻生待也「辞世千人一首」を読む。 千人といっても、 江戸時代の辞世の歌(狂歌)が充実しているようだ。
便々館湖鯉鮒(べんべんかんこうり)という狂歌師の歌:
三度炊く米さへこはし柔らかし思ふままにはならぬ世の中
式亭三馬:
善もせず悪も作らず死ぬる身は地蔵もほめず閻魔叱らず
蜀山人:
生きすぎて七十五年食ひつぶしかぎりしられぬあめつちの恩
魚屋北渓(ととや ほっけい、浮世絵師):
暑くなく寒くなくまた飢ゑもせず憂きこときかぬ身こそやすけれ
酒も飲み浮かれ女も見つ文もみつ家も興して世にうらみなし
のんきだな。 とまあこんな感じで、江戸時代とは実際泰平な世の中だったのかもしれん。 幕末維新はうってかわって殺伐としていて、中山忠光:
思ひきや野田の案山子のあづさ弓引きも放たで朽ちはつるとは
宮本大平:
えびす船打ちもはらはで白雪のふり行く老いの身ぞあはれなる