不確定申告

tanaka0903

続き。この池田雅延氏の話を聞いていると、小林秀雄の『本居宣長』は、連載途中はほんとうに面白くなかった可能性もあるよなと思えてきた。 小林秀雄自身も自分の書いたものが面白くないってことは自覚していたのだ。 だから64回1500枚、ものすごくだらだらと書いたものを、編集者に読ませて、わかりにくいところは徹底的に質問させて、徹底的に書き直して、 1000枚に縮めた。 「君が読めなくては、読者は誰も読めないのだから」というのはまさに言葉通りの意味だったのではないか。 読めない、面白くないということは、小林秀雄が、白洲正子以下、いろんな人に言われてきたことなのだ。 1000枚というのはつまり40万字だ。1500枚は60万字だ。20万字を捨てたのだ。 そのこと自体物書きにしてみたら大したことではないのだけど、まあ、ものすごく書き直したということだ。