不確定申告

tanaka0903

漫吟集

契沖の「漫吟集」なんだが、 これ読むのはかなり骨が折れる。 たまに秀歌が混じるが他は凡作としかいいようがない。 数が多くてきちんと分類されているから、読んでいるとだれる。 全体的に退屈と言われても仕方ないと思う。

菅の根に 雪は降りつつ 消ぬがうへに 冬をしのぎて 春は来にけり

悪くない。 「菅の根の」が「長き」にかかる枕詞だと知っていればすんなりわかる。 古今集

奥山の 菅の根しのぎ 降る雪の 消ぬとかいはむ 恋の繁きに

本歌取りだわな。

うぐひすも 鳴かぬかぎりの 年のうちに たが許してか 春は来ぬらむ

これもまあ、悪くない。 「たが許してか」が珍しい。

宿ごとに いとなみたてし 門松の まつにかならず 春は来にけり

どうやらこれも本歌取りらしい。藤原顕季

門松を いとなみたてる そのほどに 春あけがたに 夜やなりぬらむ

ときどきすごく良いのがある。

ねや近き 葉広がしはに 音立てて あられし降れば 夢ぞやぶるる

「夢ぞやぶるる」が良く効いている。

軒ばなる 蛛のいがきは 知らねども 山の嵐に 夢ぞやふるる

なんとこの正徹の歌の本歌取りらしい。

踏めば消え 消ゆれば摘みて 春の野の 雪も若菜も 残らざりけり

少し面白い。

立ち出でて 涼むそともの 木陰より かへりもあへぬ 夕立の空

木陰で涼んでいたら夕立がふりそのまま雨宿りした。 なかなか良い歌。

しづのをが 刈りにし跡の 日だに経ず 一つに茂る 野辺の夏草

「一つに茂る」が面白い。

池の上の 菱の浮き葉も わかぬまで 一つに茂る 庭のよもぎ

この良経の歌の本歌取りか。

おほかたの 常は水無き 山川も 石さへまろぶ 五月雨の頃

「石さへまろぶ」が斬新。

春雨は 今年のみやは 花散らす 昔をかけて 今日は恨めり

霜の上に 寝るここちして 夏の夜の 床に影しく 月ぞ涼しき

なには潟 堀り江にのぼる ゆふ潮の 限り知らるる 朝氷かな

水のおもに 散りて浮かべる 木の葉より まさりて薄き 朝氷かな

諏訪の海の こなたかなたに あひおもふ あまもこほれば かちよりぞ行く

少し面白い。