大伴旅人の酒の歌十三首
おくららは いまはまからむ こなくらむ それそのははも わをまつらむぞ
のあとに大伴旅人の酒の歌十三首というのがあって、これがなかなかおもしろい。
しるしなき ものをもはずは ひとつきの にごれるさけを のむべくあるらし
さけのなを ひじりとおほせし いにしへの おほきひじりの ことのよろしさ
いにしへの ななのさかしき ひとたちも ほりせしものは さけにしあるらし
さかしみと ものいふよりは さけのみて ゑひなきするし まさりてあるらし
いはむすべ せむすべしらず きはまりて たふときものは さけにしあるらし
なかなかに ひととあらずは さかつほに なりにてしかも さけにしみなむ
あなみにく さかしらをすと さけのまぬ ひとをよくみば さるにかもにむ
あたひなき たからといふとも ひとつきの にごれるさけに あにまさめやも
よるひかる たまといふとも さけのみて こころをやるに あにしかめやも
よのなかの あそびのみちに たのしきは ゑひなきするに あるべくあるらし
このよにし たのしくあらば こむよには むしにとりにも われはなりなむ
いけるもの つひにもしぬる ものにあれば このよなるまは たのしくをあらな
もだをりて さかしらするは さけのみて ゑひなきするに なほしかずけり
どうも泣き上戸だったらしい。 自分は飲んでもあまり泣かないので気持ちはよくわからない。 オマル・ハイヤームのルバイに通じるものがある。
冒頭の歌は有名だが、あとのもおもしろい。 昔の七賢人も好きなのは酒だったとか、 ああ醜い、偉そうに酒を飲まないやつをよく見たら猿に似ている、とか このへんの歌はもっとはやっても良いはず。