不確定申告

tanaka0903

モンゴル

宮崎市定によれば、宋の時代というのは、 コークスと製鉄の技術革新に基づく産業革命が起きていて (日本の刀鍛冶などは家内制手工業で、優れてはいるが大量生産には向かない。 これに対して宋では基本的に今日の近代工業と同じであり、 陶磁器や農具、武器の大量生産が可能であった。 マルコポーロも、中国人が薪ではなくて石炭を使うのを驚いている)、 それが元による世界征服を惹き起こしたというのだ。 これは西洋では 17~20 世紀の帝国主義に相当する。 また、中東では 7~10 世紀の、 アッバース朝ハールーンアルラシッドを絶頂期とする、 イスラムによる文芸復興に相当するという。

モンゴル帝国というのは西洋ではたいへん残虐な、 破壊的な征服だったように言われている。 またはタタールの軛、などと。 でもそれは、冷静に考えれば、 西洋によるアジアアフリカアメリカの植民地化と大して違わない。 モンゴル族が剽悍でかつ組織力に優れ、 たまたまあの時代にそれを束ねる偉大な英雄が生まれたから、 なのではなく、単に、東洋の技術革新が他を圧した結果だったのだ。

中東やイスラムに関心が薄い日本人の場合、 モンゴルの支配というのは、極めて短期間に終わったと思っているが、 ムガール帝国やその他の群小のハーン国はともかくとして、 イルハン国、キプチャクハン国、ティムール帝国などは 1500 年くらいまで続いた。 これを宋からの一連の流れとしてとらえれば、 およそ 500 年の長きにわたったことになる。