新葉和歌集・砧の音
都人らには、田舎の砧を打つ音が珍しかったらしい。
都には風のつてにもまれなりし砧の音を枕にぞ聞く (宗良親王)
里人の袖に重ねておく霜の寒きにつけて打つ衣かな (前内大臣隆)
聞き侘びぬ葉月長月ながき夜の月の夜さむに衣うつ声 (後醍醐天皇)
おしなべて夜寒に秋やなりぬらむ里をもわかず打つ衣かな (泰成親王)
聞きなるる契りもつらし衣うつ民のふせ屋に軒をならべて (尊良親王)
寝覚めして夜寒を侘ぶる人もあらば聞けとやしづが衣打つらむ (京極贈左大臣)
参考:
から衣うつ声きけば月きよみまだねぬ人を空にしるかな (紀貫之)
里は荒れて月やあらぬと恨みてもたれ浅茅生に衣打つらむ (九条良経)
み吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒く衣うつなり (飛鳥井雅経)