不確定申告

tanaka0903

近世和歌撰集集成

上野洋三編「近世和歌撰集集成」明治書院全三巻。 新明題集、新後明題集、新題林集、部類現葉集などの堂上の類題集など。 他には若むらさき、鳥の跡、麓のちりなどの撰集。これらは地下の巻に入っているのだが、 通常は、堂上に分類されないだろうか。 私家集はない。 国歌大観にもれた珍しい近世の撰集というだけあって、かなりマイナー感がある。 しかもこれまた電話帳。なぜか貸し出し扱いになっていたが、 家に持ち帰ってももてあますだけなので、とりあえずそのまま借りずに返却した。 借りたくなったらまた行けば良い。 「近世和歌研究」加藤中道館。論文集みたいなもの。それなりに面白い。

霊元天皇

車をも止めて見るべくかげしげる楓の林いろぞ涼しき

契沖

我こそは花にも実にも名をなさでたてる深山木朽ちぬともよし

数ならぬ身に生まれても思ふことなど人なみにある世なるらむ

高畠式部。 江戸後期の人だが、90才以上生きて明治14年に死んでいる。 景樹に学ぶ。少し面白い。

春雨に濡るるもよしや吉野山花のしづくのかかる下道

さよる夜の嵐のすゑにきこゆなり深山にさけぶむささびの声

なかなかに人とあらずは荒熊の手中をなめて冬ごもりせむ

最後のはやや面白いが、

なかなかに人とあらずは桑子にもならましものを玉の緒ばかり

なかなかに人とあらずは酒壷になりにてしかも酒に染みなむ

などの本歌がある。「桑子(くはこ)」とは蚕のこと。 「なかなかに人とあらずは」は「なまじ人間であるよりは」の意味であるから、 「なまじ人間であるよりは荒熊になって、てのひらでもなめて冬ごもりしようか」の意味か。

なかなかに人とあらずはこころなき馬か鹿にもならましものを

これは狂歌(笑)。

なかなかに人とあらずは花の咲く里にのみ住む鳥にならまし