異同歌
我が背子に またも逢はむと 思へばか 今朝の別れの かなしかりつる
我が背子に または逢はじと 思へばか 今朝の別れの すべなかりつる
明らかに同じ歌であるが、微妙にニュアンスが違う。 こういう歌が、調べ出すとかなりたくさんある。 最初のがおそらくはオリジナルだが、 二番目のほうが明らかにできがよい、と思う。
春立たば 咲かむと思ひし 梅の花 めづらしみにや 人の折るらむ
春立たば 咲かむと思ひし 梅の花 めづらしげにや 人の折るらむ
春立たば 咲かばと思ひし 梅の花 めづらしみにや 人の折るらむ
いずれも貫之の歌。 真ん中が現代人には一番わかり良いが、 三番目のが一番オリジナルに近いか。
こういうのは改変かもしれないしそうでははないかもしれん。 特に古い、詠み人しらずの歌などはそもそも異同歌があって当然だろう。 貫之のも詠草がそのまま残ったのかもしれんし。 後で変えたのかもしれんし。 或いは単なる転記ミスかもしれん。