花札
『虹の深淵』というタイトルの小説を書こうかと思っている。 これは江戸時代の風俗を描いているが、実際には現代日本の二次創作の闇について書きたいのである。 しかし今の時代を描くのはあまりにどろどろしてしまうので、江戸時代ということにするわけだ。
それで花札など調べてみた。 江戸時代町奉行の管轄ではない、旗本屋敷や寺社や公家の家などで賭博が開かれていたという。 寺銭などというのがそれだ。 また公家は内職として花札やいろはかるた、百人一首の歌かるた、などを制作していたという。 二条派の歌というのは二次創作そのものであり、類題集を元ネタとして、 同工異曲の歌を無限に再生産する遊びだ。 そのへんの、公家の底辺社会の闇というのも、実に深くおどろおどろしいわな。 書かない方が良いかもしれん。 でもネタとして思いついたということはここに記しておこう。 この時代のそういう世界を描くにはどうしても、宣長や盧庵や景樹も書きたくなるに違いなく、 そういうくくりの中のエピソードして書くことにするかもしれん。
それで、 ネットで花札をぐぐってると天正カルタとかうんすんカルタなどが出てくるのだが、 これらは絵柄がおいちょかぶ用の花札、つまり株札に似ている。 株札は花が描かれてないから花札ですらない。 私らが子供の頃は『じゃりん子チエ』の真似をして花札でカブをやったりしたのだが、 あれは数字が書いてないから覚えにくい。 花札というのはたぶんだが、幕府の禁制から逃れるために、 トランプやうんすんカルタなどに特徴的な数字や記号を消し去ったのだろう。 ただし何月がどの絵柄かを知っている人にはトランプとして使用することもできる。
日本人がトランプを和風におくゆかしくアレンジした、のではなくて、 単なる賭博逃れだったと見た方が当たっているだろう。
おいちょかぶは数字がわからんと面倒なんで、それ専用の、つまり賭博専用の札として、 アングラな世界で生き残ったのだとすれば話が通る。 うんすんカルタだと、縦や斜めに交差する剣や杖、あるいは棍棒が描かれているが、 かぶ札だとそれが真っ黒な帯で描かれている。 また株札には南蛮人の絵も描かれているが、これなどもトランプの絵札の名残なのだろう。 関西では割に一般的に使われてるというが、やはり、 江戸よりは禁制が緩かったためだろうか。