不確定申告

tanaka0903

句読点とかぎかっこの件

つづきだが、 気になったのでいろいろ調べてみると、閉じカギ括弧の直前の句読点を省略するものがほとんどであるが、 たまに、省略しないものがある。 たとえば岩波文庫1988年初版『千一夜物語』。

しかし、岩波文庫でも、葉山嘉樹『淫売婦』では省略している。 青空文庫版でも同様に省略されている。

永井荷風の『墨東綺譚』だが、今手元にないけど、これは句読点を省略してなかったはず。 青空文庫版でもやはりついている。

森鴎外夏目漱石志賀直哉菊池寛らはつけてないようだ。 しかし、芥川龍之介は付けていたようだ。

こうしてみると、作家によって付けたりつけなかったりしているということだろうか。

中島敦は付けたりつけなかったりしたようだ。つまり、比較的単文のものにはつけず、長いものにはつけている。

ふーむ。 結構根の深い問題のようだが。

しかし、我ながら、今までまったく気づかなかったのを見ると、省略されていてもほとんど気にならないってことかな。

文部省が、句点を省略しないのを推奨しているのは、おそらく欧米文でそのようにクオーテーションの最後のピリオドを省略するなどという記法を採用している国が無いからではなかろうか。 句読点や引用符を付けたというのは要するに欧米の真似であろう。 日本や中国にはもともとなかったのであるから。 むしろ、欧米文学に詳しい作家たちが(明治以後の作家で欧米文学の影響を受けてない作家などいないと思うのだが)、 敢えて日本独自のローカルルールを採用したということの方が驚きだ。

私の場合、()「」!、。などの記法は基本的には英文に準拠していると言ってよい。 たとえば、英文が "This is a pen." と書くならば、日本語でも「これはペンです。」と書くだけのこと。 This is a good pen (in some sense), but too expensive. だと、 これは良いペンだ(ある意味では)、しかし高すぎる。 などと書くだろう。 もっと言えば、英文を書くときと日本文を書くときでルールを変えるのが嫌だ。ルールは統一したいでしょう。