大いなる怠慢
思うに、歴代天皇の中で歌のうまい順に順位を付けるならば、 やはり一番歌のうまい天皇は、後鳥羽天皇だと思う。 その次に誰がうまいかと言えば、 これが難しいのだが、花山天皇か、後水尾天皇か、或いは、 順徳天皇、後醍醐天皇、亀山、伏見、光厳天皇なのではなかろうか。 それに続いてやっと、孝明天皇とか明治天皇のような、近代の天皇があがると思う。
私は、近代、というか近世の孝明天皇や明治天皇の歌を高く評価する。 というより私は明治天皇のファンである。 しかし、では、明治天皇が後醍醐天皇や後水尾天皇より上か、並ぶか、と言えば、 やはり違うのではないかと、思わざるを得ない。
そして、後鳥羽天皇はやはりダントツで一位だと思う。 丸谷才一の偉大な業績の一つは、後鳥羽天皇を見いだしたところであり、 やはり丸谷才一という人はすごいなと、思わざるを得ない。
丸谷才一以外の人は、つまり戦後の文人たちは、日本が民主化されたというのに、 こういう作業を何もしていない。 明治や大正の歌人や文人にはできなかったかもしれないが、戦後の文人は当然やるべきだった。 大いなる怠慢というべきだ。